労災保険について

プチ研修

平成26年2月

労災保険について

 

今月は労災保険についてご説明しようと思います。まず前提として、私は生保や損保の代理店さんとは違いますので、民間で販売している労災保険のことは詳しく存じません。また、社会保険労務士として今まで経験し、実際に手続きしてきた観点からのご説明となりますのでご容赦ください。

 

Ⅰ.労災保険とは

労災保険とは正式には労働者災害補償保険といい、法律に基づいて国が運営を行っています。原則として、労働者を1人でも使う事業主は加入する義務があります。

 

労災保険が生まれたのは、労働基準法が使用者に、労働災害が起きたときに必要な療養等の費用を負担するよう義務付けているため、その担保の意味と労働者の福祉の増進(被災労働者や遺族の援護等)を考慮してできたものです。

 

保険料は事業の種類ごとに保険料率が決まっており、原則として、労働者に支払ったお給料にその事業場に適用される事業の種類の保険料率を掛けて算出します。事業の種類ごとに保険料率が違うのは災害の発生度合が異なるためです。(現在の上限はトンネル工事等の8.9%~下限は不動産業等の0.25%)

 

たまに、労災保険を使うと保険料が上がってしまうから・・・と言われることがありますが、ある一定規模に該当しない限り、いくら労災保険を使おうと保険料率は変わりません。逆に申せば、全く労災保険を使わないのに保険料率が下がりません。この保険料率が上がったり下がったりする制度のことを労災保険のメリット制と言いますが、少し詳しいご説明が必要になるためここでは割愛します。

 

<注意>

建設業は平成24年度から労災保険のメリット対象事業場になる要件が下がりました(確定保険料が100万円以上→40万円以上も対象に)。3年間でみるので平成27年度から対象になるところが増えてくると思われます。

 

Ⅱ.いつ使うか

労働者が労災事故、通勤事故に遭った場合に、または業務に起因して病気になった場合に(それ以上の結果が生じた場合も含めて)使います。よくあるパターンとしては、切り傷、骨折等でしょうか。通勤中の車・バイク事故などもたまにあります。介護事業場などでは腰痛で使うケースもあります(ただし、あくまで業務に起因する場合です)。

 

病院にかかってもお金は原則としてかかりません。労災指定の病院であれば紙1枚出せば終わりです。院外薬局で薬をもらう場合には、その薬局用にもう1枚提出します(労災指定の薬局の場合)。状況によっては、たいした傷ではないからいいやと思われる方もいるでしょうが、会社が労働者のために用意されているものですから、可能であれば使われた方が良いと思います。被災された本人がお金を負担する必要はありません。病院が指定病院ではない場合には一時立替える必要がありますが、請求すれば後で本人口座に振り込まれます。

 

<注意>

仕事中の怪我に健康保険を使われる方がいますが、原則として健康保険は使えません。

仮に健康保険を使ってしまった場合には、健康保険組合が負担する医療費の7割をいったん返還し、その領収書と窓口で支払った3割の領収書およびレセプト(診療報酬明細書)を労働基準監督署に提出することで支払ったお金が戻ってきます。

 

ただし実際には、医療機関の診療報酬締切りが月末なので、誤って健康保険を使ってもすぐに申し出れば労災保険に切り替えてくれるケースが多いと思われます。労災保険の方が診療報酬の一点あたりの金額が健康保険より高いこともその一因かもしれません。

 

手術費用もかからず、療養のため仕事をお休みし給料の支払がない場合は、会社休日も含めて平均賃金の80%が本人の請求により支払われます。ただし、療養開始後3日間は会社が負担します。※労災保険給付についての詳しい内容は別紙をご参照ください。

 

ここで気をつけなければいけないことは、療養のため休業が4日以上になった場合には、労働基準監督署に労働者死傷病報告書の提出が必要になることです。労災保険を使っても使わなくても労働基準法にある災害補償義務を使用者が怠っていなければ労働基準監督署は何も言ってきませんが、この死傷病報告書を提出していないと「労災かくし」と受け取られます。

Ⅲ.労災保険が適用にならないケースもある

私自身は今まであまり遭遇したことはありませんが、労災保険が適用にならないケースがあります。例えば、休憩時間や就業時間前後に私的行為をしている場合の事故等です。

 

もちろん、労災になるかどうか微妙なケースもあります。ずっと長時間労働が続いていて就業中に倒れてしまった、通勤中に亡くなってしまったケースも過去にありました。その時は必要な手続き(健康保険の傷病手当金や埋葬料、障害年金等の請求)を行い、遺族の方への対応について担当する部署の方のご相談に応じました。

 

幸い、大きな問題にならずにすみましたが、現在では過重労働に対する基準も明確になり、メンタル不調者の増加もあり、法令も改正されて労働災害の認定要件も下がってきていますので、労使共に気をつけなければいけないと思います。

 

また、通勤中の事故についても、途中で合理的な通勤経路を逸脱したり、寄り道をしたりといったことで認められないケースもあります。

 

Ⅳ.最後に

労災保険についていまだに加入手続きを怠っている企業があります。しかしながら、事業主が手続きをしなくとも法律上は強制適用であり、労働者は自己申告によって保険給付を受けることができます(最終的には労働基準監督署が職権で加入手続きを行います)。

 

ただし、その場合には事業主に対する費用徴収制度もあります。もし人を採用する予定のある方がいらっしゃいましたら、労災保険制度についてご案内していただければと思います。また、労働基準監督署に相談すれば丁寧に対応してくれます。

以上