ライフステージに合せた労働時間・賃金管理について

プチ研修

平成26年4月

ライフステージに合せた労働時間・賃金管理について

 

今月は、ライフステージに合せた労働時間・賃金管理について考えてみたいと思います。

 

Ⅰ.ライフステージとは

ライフステージとは、人間の一生における幼年期・児童期・青年期・壮年期・老年期などのそれぞれの段階のことであり、家族については新婚期・育児期・教育期・子独立期・老夫婦期などに分けられます(goo辞書より引用)。今回取り上げるものは、この家族についてのライフステージに合せた労働時間・賃金管理です。

 

Ⅱ.ライフステージに合せた労働時間・賃金管理

①学卒入社~20代後半までの時期

学校を卒業して社会人となり、がむしゃらに働くこの時期は仕事を覚えるのに一番よいときです。出会った先輩や上司、取引先などあらゆるところから様々な人の考え、仕事の進め方等を吸収し、自分の肥やしにできます。労働時間については逆に会社がセーブしないと長時間労働が当たり前になりがちですが、それでもあまり苦にならないと思います(勿論人それぞれですが)。

 

賃金は、結果を求めつつも職業人としての基礎を作るor能力伸長に重点を置いたらいかがでしょう。勤務態度を評価する、仕事の能力に応じた能力給を設定する、資格取得を奨励するような資格手当なども検討材料でしょう。

②新婚~育児期

独身生活が、結婚して家庭を持ち、子供も生まれて変わっていきます。家族ができることで特に生活資金に対してシビアになっていきます。自分だけの生活と違い、配偶者や子供のことも気にかけるためです。家を買うために貯蓄を始める等今まで以上にお金を稼がなければと思う方も大勢いるでしょう。

 

また逆に、共働きの女性が会社を辞めずに育児休業を取ることが当たり前になりました。育休中に賃金の約5割が支給されることと無縁ではありませんが、男性も公表されているアンケート結果等からみると、子育てに関わりたいと考えている人が4割近くに上り、男女ともに育児に関心がある方が増えています。少子高齢化で、昔以上に子供に関わりたいと思う方が多いのでしょう。労働時間は、短時間労働時間制度やフレックスタイム制度を活用する等、両立支援に向けた労働時間制度をできれば設定し、希望があれば対応していく形が望ましいと思われます。

 

賃金については、この新婚~育児期には生活できるレベルを確保する必要があります。能力伸長や勤務評価に重点をおきつつも最低限の家庭生活をおくれるレベルまで賃金を引き上げないと、二重就業や転職を考える方も出てくるでしょう。無論、共働きであれば夫婦合わせた収入で生活可能な方もいますので、一律に家族手当等を支給せず、要件を定めて運用するといったことも必要です。

 

また、仮に両立支援制度を労働者が求めるならば、前述に関わらずその働き方に応じた賃金支払を行うべきです。他の労働者への影響もあるため、短時間制度を望む労働者なら働く時間分相当の賃金を設定するなど、そこで通常に働く社員と別扱いにして対応する必要があります。何らかの理由で仕事上の働きが減るのであれば、賃金がその分減ったとしても労働者自身が納得することでしょう。そして、月例賃金はそうであったとしても、結果として以前と変わらず成果を出すのであれば、賞与その他一時金で利益を還元し、称賛すべきです。

③教育期

子供の教育期は、中堅社員から幹部社員に移行する時期です。一般的に言えば、責任ある仕事を任されて一番やりがいを感じるときではないでしょうか。部下を持ち、マネジメントをしながら業務目標を達成していくリーダーの時期と重なります。この時期もまた長時間労働になりがちですが、管理監督者であれば労基法で規定されている労働時間の適用除外者になる可能性もあり、自己管理が今まで以上に求められます。直属の上司or経営者もその業務執行の動向に注視していく必要があると思われます。

 

賃金については、中堅から幹部社員に至る時期ですから、仕事の結果が求められる時期です。目標管理を導入するなどして、成果に見合った報酬を支払う形が望ましいでしょう。

 

④子の独立期

そして、子独立期ですが、ようやく子供が離れて安心と思ったら親の介護が少しずつ始まる時期でもあります。介護については、ここ最近、面倒を見なければという理由で退職される方が若干出ている感じを受けます。介護施設が不足していることも一因だと思いますが、介護初期のため在宅支援の状態であり、今の働き方とは両立ができないという理由をそのまま受け入れるべきでしょう。せっかく育った社員が退職するのは大きな損失です。また、退職するまでいかなくとも仕事との両立が大変な方もおられるかもしれません。この時期は、子育て期と同様に、弾力性のある労働時間制度とそれに応じた賃金制度を設定して対応していくことが望まれると思います。

 

Ⅲ.最後に

かけ足で感じたことを述べましたが、今後は、仕事に労働者を合せるのではなく、労働者に仕事を合わせていくことが少しずつ求められてくるのではないかと思っています。特に青年期を除く職業生活におけるライフステージで、労働者が自分で働き方とそれに応じた賃金を選択できる制度があれば、自らのモチベーションを下げることなく働き続けることができ、結果的に企業にメリットを及ぼすことにつながるのではないかと個人的には考えています。

 

勿論、そのような仕事を創り出すことは大企業でも困難かもしれませんし、ましてや中小企業で労働者の希望に応じた労働時間制度や賃金制度など夢物語と思われても致し方ないと思っていますが、そのような働き方が望まれていくのではないかと考えます。

 

何故ならば人は十人十色です。仕事だけが生きがいの方もいれば、趣味の時間を大切にしたい人もいますし、親の面倒を見ながら働きたい方もいれば(最近は逆のケースが多いですが)、子育て期は家庭生活の比重を高めたいと考えている方もいます。昔とは違い、食べ物に困らない時代に育ったという時代背景もあるかもしれません。

 

とりとめのないご案内となってしまいましたが、社員のモラル・モチベーションの維持、向上につながる労働環境整備への一つのご参考になれば幸いです。

 

以上

 

※業務の内容等によっては、今回のご案内は相容れないものとなるかもしれませんが、ライフステージを一般的に捉えた場合にこのような考え方もあるという形でご理解を頂戴できればと思います。