年俸制について

プチ研修

平成27年5月

年俸制について

 

今月は年俸制についてご案内いたします。

 

Ⅰ.年俸制とは

年俸制とは、年間を通して報酬金額を設定する制度のことです。報酬金額つまり賃金は、一般的には月給○円、日給○円と設定しますが、年俸は年間でいくらと設定をします。ただし、報酬の支払い方については一度に支払うことができず、毎月一定期日に分割して支払う必要があります(労基法第24条)。分割の仕方は自由なので、12ヶ月で割って毎月均等払い、あるいは16ヵ月で割って夏冬に別途2ヵ月分を支払う等色々考えられます。

 

Ⅱ.年俸制を導入するにあたって

年俸制は報酬が上下する性質を持ちます。よって、自己の裁量によって成果を大きく上げられる業務に従事する方には適していますが、それ以外の業務についてはあまりお勧めできません。一般的には、業績に直接責任を持つ管理職・専門職・営業職の方に適しています。

※管理職でも自己の裁量権があまり無い、営業職でも決められた固定客のみ担当しているような方にはなじみません。

また、年俸制を導入するにあたっては、数値目標が明確になされている必要があります。ただし、目標管理制度がしっかりと定着し、目標の設定~実行~フィードバック~改善目標がしっかりと廻っている職場でないと上手くいくとは思えません。上司が一方的にノルマを与え、結果のみを重視して年俸を決める制度では逆にモチベーションダウンに繋がるのではないでしょうか。

 

Ⅲ.年俸制導入の注意点

年俸制は以下の点にも注意が必要です。

① 法定時間外を超える労働、休日・深夜労働には割増賃金を支払うこと

② 賞与も含めた年俸額を定めた場合、割増賃金の算定基礎賃金に賞与額も含める必要があること

③ 年度途中に会社都合で退職する場合、残りの年俸額の支払いが免れないこと

④ 欠勤や遅刻、早退等の働かない時間があっても、欠勤遅刻控除等ができないこと

以上は原則です。労基法第41条の管理監督者等に該当する方、または規則規程・年俸契約の取り決め方によっては上記の点をクリアすることも可能です。

また、本人の成績によっては報酬が下がることも見込まれるため、下がった場合も含めて一定以上の報酬を設定しないと向かない制度です。

 

Ⅳ.最後に

以上のように年俸制の制約を理解されると、月給制のままで良いのではないかと思われるかもしれません。実際に月給制の方がより柔軟に対応でき、働いた期間の成績について反映しやすいと思います。

結局、年俸制というのは受け止め方の問題です。聞こえが良いので取り組みたくなるものですが、その反面、きちんと目標管理制度や規則規程等を整備して取り組まないと問題・形骸化し、年俸制を導入する目的から離れたものとなる危険性があります。

勿論、成果主義を謳って年俸制を導入し、上手くいっている企業もあることと存じます。要は取り組み方の問題でしょう。

 

以上