社員の出産、育休、職場復帰に関する手続きについて

プチ研修

平成27年4月

社員の出産、育休、職場復帰に関する手続きについて

 

今月は社員の出産、育休、職場復帰に関して、関連する労働社会保険の手続きをご案内いたします。過去にもプチ研修で取り上げましたが、数年を経て、制度の充実など大きく変わった分野がこの育児関連です。ご参考になれば幸いです(※ここでは協会けんぽの事業所を対象にしています)。

 

Ⅰ.見込まれる必要な手続き

① 産前産後休業期間の社会保険料の免除申出

② 健康保険の被扶養者異動届の提出

③ 出産育児一時金の申請(医療機関への直接払い、差額申請、内払金支払、受取代理、自分へのいずれか選択)

④ 出産手当金の申請

⑤ 育児休業期間の社会保険料の免除申出

⑥ 雇用保険の育児休業給付金の申請

⑦ 職場復帰後の月額変更届の提出(育児月変)← 給与が下がった場合

⑧ 養育期間の標準報酬月額の特例申出    ←   同

 

Ⅱ.手続きの内容

  ① 産前産後休業期間の社会保険料の免除申出・・・年金事務所に提出します。

    平成26年4月から、産前産後休業期間にかかる社会保険料が申出により免除になりました。具体的には、産前休業日の開始月から産後休業終了日翌日の前月まで、健康保険と厚生年金保険料がかかりません(会社も社員も両方)。

 

  ② 健康保険の被扶養者異動届の提出・・・年金事務所に提出します。

お子さんが生まれた場合には、すみやかに被扶養者異動届を年金事務所に提出しましょう。保険証の会社宛到着まで通常1週間以上はかかりますので、もし至急必要なら、資格証明書を交付してもらいます。

 

  ③ 出産育児一時金の申請・・・医療機関を通して、あるいは協会けんぽに提出します。

出産お祝金として42万円(産科医療補償制度の対象とならない出産の場合は40万4千円)申請により支給されます。現在では、医療機関への直接支払制度を選択する方が多いと思います。

※医療機関に直接支払われるので、実際にかかった出産費用と相殺となり、不足分があれば残額を支払い、余りが出たなら差額分について健保に請求する形。なお、医療機関によっては出産予定日の2ヵ月前から事前申請できる受取代理制度が可能なところもあります。直接支払制度or受取代理制度が選択できるのか、医療機関に確認しておきましょう。

あと、以前と同様に、全額を直接自分の口座に支給してもらうことも可能です。

 

  ④ 出産手当金の申請・・・協会けんぽに提出します。

産前産後休業期間中に給与の支払が無ければ、出産手当金を申請します(給与の支払があっても、1日あたりの金額が出産手当金の日額よりも低い場合は申請して差額を受け取ることができます)。出産手当金は、1日あたり標準報酬日額の3分の2の金額になります。

 

  ⑤ 育児休業期間中の社会保険料の免除申出・・・年金事務所に提出します。

育児休業に入ったら、育児休業期間中の社会保険料の免除申出を行います。免除となる期間は、育休に入った月から育休終了日翌日の前月までとなります。

※育休終了日が当初の予定日より早くなったときは終了届を、逆に終了予定日を延長するときは延長届を提出します。

 

  ⑥ 雇用保険の育児休業給付金の申請・・・ハローワークに提出します。

育児休業に入ったら、申請により雇用保険から給付金が本人に支払われますので、その手続きを行います。早くても育児休業開始後2ヵ月過ぎてからの申請になりますが、休業開始時賃金日額の67%(育休6ヵ月目以降は50%)が支給対象となる日数分支給されます。育休期間中に給与が支給されている場合には、その金額と育児休業給付金の額が休業開始時賃金日額の80%以内であれば全額支給となります。つまり、給与が休業開始賃金日額の13%(育休6ヵ月目以降は30%)以内であれば、給付金が全額受給できます。← 原則、お子さんが1歳になるまで(例外あり)

※育児休業期間中に働いても、支給対象期間(通常30日間)の労働時間数が80時間以内であれば認められるといったケースもありますので、その場合は管轄ハローワークにご確認ください。

 

  ⑦ 職場復帰後の月額変更届の提出・・・年金事務所に提出します。

育児休業終了後に職場復帰する際、育児のために所定労働時間の短縮を希望される社員も多いと思います。その場合、一般的には育休前よりも給与が下げるわけですが、その場合に月額変更届を年金事務所に提出して、登録されている標準報酬月額を下げる(社会保険料を下げる)手続きを行います。

 

  ⑧ 養育期間の標準報酬月額の特例手続きの申出・・・年金事務所に提出します。

⑦の手続きを行った場合に、この養育期間の標準報酬月額の特例申出も併せて行います。これは、登録される標準報酬月額は下がるものの、将来、受け取る年金額を計算する際に使用する標準報酬月額は下がる前のものが適用される申出です。最長で子が3歳になるまで適用されますので、給与が下がった場合には月額変更届の提出だけでなく、この特例申出も行っておきましょう。

 

Ⅲ.最後に

既によく御存じの方もおられますが、育児関連の諸手続きの中には、事業主が受けられる助成金制度もあります。

ただし、助成金制度は政府の政策にもとづくもので、毎年内容の見直しがあり、また申請窓口も変わることがあるので事前に確認が必要です。

一般的に準備が必要なのは、就業規則、育児休業規程、一般事業主行動計画の策定と届出です。一般事業主行動計画については労働局の雇用均等室が相談にのってくれますが、インターネットで「両立支援のひろば」と検索すると、厚労省が立ちあげているサイトが見つかります。そこには、色々な企業の一般事業主行動計画が公表されています。

一般事業主行動計画とは、次世代育成支援対策推進法にもとづき、従業員が101名以上の企業に策定と届出が義務付けられている、仕事と子育ての両立を支援する計画のことです。

助成金を受給するには、今までは(今後はわかりませんが)、事業規模にかかわらず一般事業主行動計画の策定、届出および公表が義務づけられていたので、このサイトで公表する企業も多くありました。

現在、人手不足に悩んでいらっしゃる事業所もあると思います。優秀な人材が、出産や育児のために職場を去ってしまったら、また一から社員を育てなければならず、事業所にとっては大変な損失です。また、現代の求職者には休暇等の取得実績や離職率について関心のある方が大勢います。

優秀な人材を確保するためにも、両立支援の取組を進めていく必要があるのではないでしょうか。

 

以上