プチ研修
平成23年6月
短時間正社員制度
今月は短時間正社員制度をご紹介します。短時間正社員制度とは正社員の身分、保障のまま労働時間が通常の正社員よりも短く設定されて働くことができる雇用管理の制度です。当然ノーワークノーペイの原則により、短くなった労働時間分の賃金はカットしても構わず、賞与や退職金など正社員に支給するものがあれば短時間正社員にも対象となりますが、短くなった労働時間に応じて支給額を減額することも可能です。
<短時間正社員制度が求められる理由>
1.働き手のニーズが多様化し、仕事一辺倒の社会生活が変化してきている。
高度経済成長時代であれば、男性は外で仕事を、女性は家で家事・育児をという生活が当たり前でした。ところが現在は低成長時代となり、労働者の賃金は以前のように上がらず、女性の社会進出は進み、非正規労働者も併せて増加しました。私が子供のころは、母親は専業主婦といった家庭(片働き家庭)がほとんどでしたが、1990年頃を境に共働き家庭がそれを上回っています。
労働者の意識も変わり、将来は社長を目指して遮二無二働く者もいれば、自分の趣味を楽しみたい、仕事をしながらも勉強して資格を取りたいといった者も徐々に増えてきました。また、子供が小さいうちはそばにいたい、または親の介護をしたいといった理由で労働時間の短縮を希望する者も増えています。
2.社員が時間コストを意識し、業務効率の向上につながり、周囲との理解が深まる。
短時間勤務に従事すること=業務を効率よく行う必要が出てきます。いかに効率よく働くかということを常に考えるため、時間コストを自ずと意識するようになります。また、限られた時間の中で業務を処理するためには、非効率な業務の見直しや自分の業務を周りにも見えるように段取りを組む必要があり、それは組織体制の整備や業務効率の向上につながると思われます。また、周りと更に情報を共有することで他者との理解(コミュニケーション)が深まります。
会議のやり方も変わるかもしれません。全員が集まるのではなく少数ミーティングを繰り返す、報告や連絡事項およびそれに対する意見や要望についてはメールで行う、というような形も考えられます。
また、短時間正社員自身にとって仕事以外の時間が増えることで、地域との関わりや自己反省の時間に充てることでき、また違った物の見方など自分の成長に資することができると思われます。
3.社員のモチベーションアップや採用コスト軽減に結びつく。※ただし一時的に人件費は上昇します。
短時間正社員制度が制度として実際運用されていれば、社員の定着率は良くなり、採用希望者は増えると考えられます。なぜなら、長く働き続けることができる会社であると社員や採用希望者が思うからです。
また、アルバイトやパートを短時間正社員に採用する制度を設けた場合には、彼・彼女らのモチベーションアップに深く資すると考えます。社員の給与を時間当たりで算出すると一目瞭然ですが、アルバイトやパートに対してかなり高くなるケースがほとんどです。また、一般的にアルバイトやパートに賞与や退職金を設けている企業は少なく、頑張り次第によっては短時間でも社員になれるこの制度は、彼・彼女らのモチベーションアップに大きく役立つと思われます。
ただし、試験制度その他のハードルを設けないと希望する者がすべて短時間正社員となり、社会保険等の法定福利費や法定外福利費の負担が大きくのしかかるので注意が必要です。
★厚生労働省では、企業が短時間正社員制度を導入し、対象者が出た場合に申請により助成金を支給しています。(均衡待遇・正社員化推進奨励金の中の短時間正社員制度)
中小規模事業主の場合の支給額は対象者1人目が40万円、2人目以降10人までが20万円です。
※支給に際してはいくつか要件がありますので、労働局等にご確認いただくか私までご連絡ください。
<最後に>
私は、東日本大震災で被災された企業こそ、この制度を活用すべきではないかと思っています。多くの企業で震災前と同じ賃金を支給するのは困難と思われますので、労働時間は減ってもなんとか仕事を確保して頂きそれに応じた賃金を支給する。そして社員としての身分のままで瓦礫処理や地域復興のために要する時間を確保してあげる。また国は、被災企業に対しては助成金を増額するなどして支援する。このような制度として活用されるのであれば、もとは事業主の皆様が負担している雇用保険料からお金が出ているのですから、有効な使い道として活きてくるのではないでしょうか。