プチ研修
平成27年1月
精神障害の労災認定基準について
今月は精神障害に関する労災認定基準についてご案内いたします。
Ⅰ.社員の精神障害に関する労災請求が増えています
今年6月に発表された平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」によると、精神障害に関する労災請求件数が1,409件(前年度比152件増)と過去最多になりました。(別添参照)http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11402000-Roudoukijunkyokuroudouhoshoubu-Hoshouka/seishin_2.pdf
昨今では、健康保険の傷病手当金(社員が私傷病で働けず給与支払がない場合に、健康保険から給付される制度)の請求件数の4分の1が精神疾患によるものです(H26全国協会健保データより)。
今までは本人の私傷病とされてきたこの精神障害ですが、今後はさらに労災請求が増えるかもしれません。業務上のケガであれば本人に問題がある場合も多いのですが、精神障害となると業務上の過度な心理的および身体的ストレスが原因とされます。使用者責任も今まで以上に問われる事態となりますので、今後はより一層、社員の働き方(働かせ方)に気を配る必要があると思います。
Ⅱ.労災認定の基本的考え方 (Ⅱ、Ⅲの文章については厚労省パンフレットから一部抜粋)http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120215-01.pdf
精神障害は、外部からのストレス(仕事によるストレスや私生活でのストレス)とそのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ると考えられています。
発病した精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に限ります。
仕事によるストレスが強かった場合でも、同時に私生活でのストレスが強かったり、その人の既往症やアルコール依存など個体的要因が関係している場合には、どれが発病の原因なのかを医学的に慎重に判断されて労災となるかどうかが判断されます。
業務に関連して発病する可能性のある精神障害の代表的なものは以下のとおりです。
*気分[感情]障害・・・・・うつ病
*神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害・・・・・急性ストレス反応
Ⅲ.労災認定基準(認定要件)
<精神障害の労災認定のポイント>
① 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
② 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヵ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③ 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
① 認定基準の対象となる精神障害かどうか
認定基準の対象となる精神障害は以下のとおりです。
・症状性を含む器質性精神障害 ・精神作用物質使用における精神および行動の障害
・統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害 ・気分[感情]障害
・神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害
・生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
・成人のパーソナリティおよび行動の障害 ・精神遅滞〔知的障害〕 ・心理的発達の障害
・小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害、特定不能の精神障害
② 業務による強い心理的負荷が認められるかどうか
労働基準監督署の調査に基づき、発病前おおむね6ヵ月の間に起きた業務による出来事について、別表1の「業務による心理的負荷評価表」により「強」と評価される場合、業務による強い心理的負荷が認められます。
☆「業務による心理的負荷評価表」は大きく二つに分かれており、一つは「特別な出来事」、もう一つは特別な出来事に該当しない「具体的出来事」です。
「特別な出来事」に該当する場合は、心理的負荷の総合評価を「強」とします。
「特別な出来事」に該当しない場合は、以下の手順により心理的負荷の強度を「強」「中」「弱」と評価していきます。
(1) 業務による出来事が、別表1の「具体的出来事」の36項目に当てはまるかどうか、表を見ながら判断する。
※心理的負荷の強度にあるⅢ、Ⅱ、Ⅰは、それぞれ「強」「中」「弱」に該当。
(2) 当てはまったら、その項目の「心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」と判断する具体例」の内容に、事実関係が合致するか判断する。
※事実関係が合致すれば、その強度で判断します。事実関係が合致しなければ、表にある「心理的負荷の総合評価の視点」の内容を考慮して「強」「中」「弱」を判断。
(3) 出来事が複数ある場合には、その全体を一つの出来事として評価する。
1. 複数の出来事が関連して生じた場合には、その全体を一つの出来事として評価し、原則として最初の出来事を具体的出来事として別表1に当てはめ、関連して生じたそれぞれの出来事は出来事後の状況とみなして全体評価します。
2. 関連しない出来事が複数生じた場合には、出来事の数、それぞれの出来事の内容、時間的な近接の程度を考慮して全体の評価をします。
③ 業務以外の心理的負荷による発病かどうか、個体側要因による発病かどうか
別表2の「業務以外の心理的負荷評価表」を用いて、心理的負荷の強度を評価します。Ⅲに該当する出来事が複数ある場合などは、それが発病の原因であるといえるか慎重に判断します。
個体側要因によるかどうかは精神障害の既往歴やアルコール依存状況など、その有無と内容について確認し、それが発病の原因であるといえるか慎重に判断します。
Ⅲ.最後に
精神障害での労災請求が増えていることは、労災認定基準が平成23年12月に新しくなったことにも関係があります。今回ご案内のとおり、新たに心理的負荷評価表などで具体的出来事が示され、労災請求が可能ではないかと考えられるようになったためです。
もちろん、それだけではなく、冒頭に申し上げたとおり、精神疾患で会社を休む労働者が増えていることも原因の一つです。これには様々な要因があり、解決が容易ではない問題ですが、企業側からは従業員に労災請求など起こされぬよう、個々の従業員に配慮した労務管理を行っていただければと思います。特に、常日頃からメンタル面のチェックが大切でしょう。
以上
③ 業務以外の心理的負荷による発病かどうか、個体側要因による発病かどうか
別表2の「業務以外の心理的負荷評価表」を用いて、心理的負荷の強度を評価します。Ⅲに該当する出来事が複数ある場合などは、それが発病の原因であるといえるか慎重に判断します。
個体側要因によるかどうかは精神障害の既往歴やアルコール依存状況など、その有無と内容について確認し、それが発病の原因であるといえるか慎重に判断します。
Ⅲ.最後に
精神障害での労災請求が増えていることは、労災認定基準が平成23年12月に新しくなったことにも関係があります。今回ご案内のとおり、新たに心理的負荷評価表などで具体的出来事が示され、労災請求が可能ではないかと考えられるようになったためです。
もちろん、それだけではなく、冒頭に申し上げたとおり、精神疾患で会社を休む労働者が増えていることも原因の一つです。これには様々な要因があり、解決が容易ではない問題ですが、企業側からは従業員に労災請求など起こされぬよう、個々の従業員に配慮した労務管理を行っていただければと思います。特に、常日頃からメンタル面のチェックが大切でしょう。 以上