賃金について・・・その6(適正な賃金とは)

プチ研修

平成22年5月

賃金について その6(適正な賃金とは)

 

賃金を適正に決めるには、どうしたらよいでしょうか?

賃金は前にも述べたように、会社から見れば人件費(コスト)であり、従業員からみれば生活の糧となるものです。当たり前のことですが、会社は人件費を抑えて利益を上げたいと考え、従業員は家族のためにも豊かな生活を送りたいと賃金アップを会社に期待します。

両者の立場が相反していることは明白ですが、解決策はないものでしょうか?

(1)賃金は誰から頂くのか

賃金は誰から頂くのでしょう。この答えは簡単です。お客様から頂くのです。自社のサービスや商品を利用(購入)してくださるお客様が支払ってくれたお金が、会社を経由して従業員の賃金となります。

では、お客様はどうして自社のサービスや商品を利用(購入)してくださるのでしょう。この答えも簡単です。そのサービスや商品があるとお客様自身が助かるからです。そのサービスや商品が気に入っているからです。助かるとか気に入るということは、お客様の心に安心や喜びの感情が生まれているものと推察できます。

極論かもしれませんが、お客様に安心してもらう、喜んでもらうには、やはり、その商品やサービスを提供する会社の従業員が安心して、喜んで働く必要があるのではないでしょうか? 従業員が安心せず、仕方なく働いている会社のサービスや商品を、お客様が気に入るでしょうか?

従業員が安心して働くには、最低でも家族を含めて生活ができる賃金が必要になります。生活できない賃金では安心して働くことはできないでしょう。ただし、賃金が多いから喜んで働くとは限りません。

賃金が40万円の従業員Aがいたとします。同業他社の同職種の人と比べても高水準の賃金です。Aは、同業他社よりも高い賃金を常日頃から自慢に思っていました。でも、同じ職場で、自分よりも仕事ができないと思っていた従業員Bの賃金が50万円だったと知ったら、Aは喜んで働くでしょうか?

Aが自慢に思っていたのは本当に40万円の賃金でしょうか? 違います。Aが自慢に思っていたのは同業他社よりも高い賃金 → つまり自分を高く評価してくれていることを自慢に思っていたのです。

賃金は評価の裏返しに過ぎません。

また、社員が喜んで働くには、どうしたら良いでしょうか? これを考えるとき、やはり、仕事そのもの(自社のサービスや商品)に誇りを持つ必要があるのではないかと思います。お客様の役に立っている、喜ばれている、という思いが、その仕事に携わっていることを嬉しく思い、より良い商品やサービスの提供を目指そうとする行動に繋がってくるものと思います。

アメリカでモチベーション研究を重ねていたF.ハーズバーグは、その著書「仕事と人間性」の中で、動機付け理論、衛生理論という考え方を述べました。これは、ピッツバーグという都市で働く200人の技師と経理担当者に面接を行い、仕事にかかわる上で、どんなときに満足感を得たのか?逆にどんなときに不満足感を得たのか?という回答を得た結果、導き出した考え方です。

この研究結果からみても、自社の従業員が喜んで働くためには、仕事そのものに達成感、周りからの承認、誇りを感じられるようにしてあげることが重要であること。また、賃金や作業条件は極端な不満を招く要因となるので(それが改善されたからといって極端な満足を招く要因にはなりませんが)、生活が保障できる賃金、また仕事を遂行できる作業環境を整備していくことが重要であると考えます。

 

(2)適正な賃金とは

上記から、適正な賃金とは、同業他社の水準に近く、生活が保障できる金額で、また従業員間の賃金が公平・適正な評価を基に決められるものであることが、必要な条件となるのではないでしょうか。

特に中小企業においては、社員の賃金については、経費とは考えずに人に対する投資と考え、社員にも「これを達成してくれた結果、これだけ利益が出たら還元する」と伝え、会社も社員も同じ共通の目標を持って取り組むことが、相反している両者の立場を解決する方法になると考えます。

それと同時に、仕事に対する誇りを常日頃から繰り返し意識させることが重要ではないでしょうか。

以上