賃金について・・・その5(賃金制度その2)

プチ研修

平成22年4月

賃金について その5(賃金制度その2)

 

代表的な人事賃金制度を二つご紹介します。

(1)職能資格等級制度(職能給)

職能資格等級制度は、社員の職務遂行能力(職能)に着眼して、保有する職能の度合いによって資格等級を設定し、能力の向上により職能要件を満たしていけば、上位の資格等級に昇格していく制度のことをいいます(※ただし、中位資格以降の昇格には昇格試験を実施するケースがあります)。

資格等級に対応した賃金表が設定され、毎年の人事評価の結果によって、社員個々に金額の差を設けながら昇給していく形が一般的です。ただし、賃金表には上限額が定められており、上限額まで到達してしまった場合は昇格しない限り昇給はありません。

<この制度のメリット>

・異なる職種をひとまとめにして資格等級を設定するため、職種間の異動が行いやすい。

・職務遂行能力の向上=賃金の上昇につながるため、社員は自ら能力向上を目指し、会社の業績向上にも寄与する制度。

・一般的に中位資格までは習熟による昇格が見込まれるため、社員の勤続意欲や生活の安定に資することができる。

<この制度のデメリット>

・能力基準があいまいだと結果的に年功的運用になってしまう。

・職務内容が時代によって変わると、過去の能力の蓄積が必ずしも現在の成果に結びつかない。

・一般的に中位資格までは習熟による昇格が見込まれるため、社員の年齢構成によっては毎年昇給原資が必要になる。

・能力を上げるためには、足りない部分を補う教育が必要不可欠。(社員に能力を上げる意欲があっても、当然ながらすぐには上がらない。上司が時間をかけて取り組む必要がある。)

 

(2)職務等級制度(職務給)

職務等級制度は、社員の職務(仕事)に着眼して、各々の職務の難易度(職務価値)を相対評価して賃金を決定する制度であり、ある意味では、会社への貢献度合いに応じた合理的な制度といえます。

ここでいう職務とは、職種よりも細分化された仕事の固まりであり、営業職種であれば一般営業職、開拓営業職、営業管理職とか、実際の業務内容に応じて相対評価できる仕事の固まりを職務として設定します。

職務の難易度は、事前に会社が定めた判定項目(役割や責任の重要度、肉体的・精神的なつらさの程度、専門知識・能力など)に従って、全ての職務を評価し点数を付けていく方法(簡易職務分析手法)等で決定します。

評価点数が近い職務をまとめて職務等級○級として格付し賃金表を設定する、または職務別に賃金表を設定して、その上限額および下限額の範囲内で毎年の人事評価により賃金を支給します。

<この制度のメリット>

・職務に対する賃金なので、賃金決定の方法が合理的であり簡単である。

・職務が変わらなければ賃金が変わらないので、賃金の総額管理が容易である。

<この制度のデメリット>

・職種間の異動が難しい。職種が変わると賃金が変わってしまう(※同じ等級であれば別)。

・職務遂行能力が高い社員でも、上級の職務に変わらない限り賃金は上がらない。

(例.一般営業職で成績が抜群であっても、営業管理職に空きが出ない限り昇級できない)

・実際の現場では、与えられた職務以外の仕事も発生する。評価基準の公平さが特に問われる。

(※評価基準の公平さは職能給も同様の問題。上記は、職務給の方が更に問われるという意味)

 

職能資格等級制度や職務等級制度にかかわらず、人事賃金制度は、その導入後も会社の実情に合わせて定期的に見直しを図っていく必要があります。

以上