労働時間について・・・その3(時間外労働協定の締結と届出)

プチ研修

平成21年5月

労働時間について・・・その3 (時間外労働協定の締結と届出)

 

①時間外労働協定とは

労働時間は週40時間以内、1日8時間以内が法定労働時間の範囲内であると説明してきました。変形労働時間制を活用しても、その変形期間を平均して週40時間以内に所定労働時間を設定する必要があります。ところが、日常の企業活動においては、臨時、突発的な対応や繁忙期、決算期等の忙しい時季には、どうしても所定労働時間では対応できなくなる可能性があります。そこで、労基法では、使用者が前もって労働者の過半数代表者と時間外労働に関する協定を結び、その届出を労基署に行うことによって、その協定で定めた時間外労働時間の範囲内であれば、法定労働時間を超えて労働者を労働させることができる旨の規定を別に定めています。(労基法第36条の規定であることから、この協定を一般的にサブロク協定と呼んでいます。)

 

②協定で定める内容

(1)時間外労働をさせる必要のある具体的な事由

(2)対象労働者の業務の種類及び労働者数

(3)1日についての延長時間の限度

(4)1日を超え3ヵ月以内の期間についての延長時間の限度(起算日を明記)

(5)1年間についての延長時間の限度(起算日を明記)

(6)有効期間

※休日労働をさせる場合は、労働させることのできる休日とその始業・終業時刻も定める。

 

③協定を結ぶに当たっての注意事項

イ.労働者の過半数代表者の選出手続きに瑕疵がないように

(監督又は管理の地位にある者は代表者にはなれません。また、時間外協定を締結することを明らかにして実施される投票、挙手等による手続きにより選出された者であること。)

ロ.延長時間を限度内に収めること。

(協定で定める延長時間には限度があり、原則としてその限度時間の枠内で定める必要があります。ただし、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行う必要のある特別な事情がある場合には、その具体的な特別な事情を明記するなど別途要件を満たせば、限度時間を超えて協定で定めた時間を労働させることができる特別条項付き協定を届出ることも可能です。また、例外として、建設業や運送業等の一部の事業には限度時間の適用はありません。)

ハ.協定はあくまで免罰効果でしかなく、個別に時間外労働に対し同意を得ること。

(時間外協定の締結・届出は、労基法の法定労働時間を超える労働に対する刑罰「6ヵ月以下の懲役等」を免れる効力しか生ぜず、これをもって労働者に対し時間外労働を強制することはできません。雇用契約書の交付や就業規則の周知等により、個別又は包括的に労働者の同意を取っておくことが必要です。)

 

④最後に

ある労働基準監督官が言っていましたが、労基署の定期監査の際には、まず時間外協定の届出の有無を確認するそうです。法律でいくら週40時間と定めても、実際には法定時間を超えて労働させている企業が多く存在し、その行為の基となる協定書の存在が問われるのでしょう。現在のような不況下では、時間外など皆無に等しい事業場も存在しますが、1日8時間、週40時間を超える残業が発生する状況にあるならば、速やかに届出を行っておく必要があるでしょう。尚、某金融機関では、通常全く残業が発生しませんが、年に2日だけ30分~1時間以内の残業があり、その時だけ有効期間2日間の時間外労働協定を作成し労基署に届け出ていました。

以上