障害者雇用促進法と納付金・調整金制度

プチ研修

平成24年12月

障害者雇用促進法と納付金・調整金制度

 

Ⅰ.障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法とは正式には「障害者の雇用の促進等に関する法律」といい、障害者の職業の安定を図ることを目的に、国または地方公共団体あるいは事業主に障害者の雇用の促進のための様々な措置を課している法律です。

 

Ⅱ.一般事業主の障害者雇用義務

障害者雇用促進法の第43条により、事業主は常時雇用している労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数以上の身体障害者又は知的障害者を雇用しなければなりません。現在の障害者雇用率は1.8%であり、計算上は常用雇用者が56人以上いる場合に最低1人は障害者を雇用する義務があります(1人未満の端数は切り捨て)。なお、法律では精神障害者の雇用義務まで求めていませんが、雇用している場合はもちろん雇用障害者数に含めて構いません。また、障害者の就業が困難と認められる一部業種については、常用雇用者数について当該業種ごとの除外率を乗じ差し引くことでその事業所の常用雇用者数を算出します。

 

Ⅲ.雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度とは、一般的に障害者を雇用する場合に経済的負担が発生するものと考えて、法律を守って必要な人数の障害者を雇用している事業主に対して、そうではない事業主に相応分の負担を求めている制度です。

実際には、上記Ⅱの障害者雇用率を乗じて導き出した人数(法定雇用障害者数)をもとに、不足している雇用障害者数×月額5万円を国に納めます。ただし、すべての事業主が対象ではなく事業規模として常用雇用者数が201人以上いる事業主が対象です。また、平成22年7月にそれまで常用雇用者数301人以上だったものが201人以上に適用拡大されたことから、201人以上300名以下の常用雇用者数がいる事業主に対しては、平成27年6月まで不足1名あたりの月額が4万円に減額されています。

 

Ⅳ.雇用調整金制度と報奨金制度

障害者雇用調整金とは、法定雇用障害者数を超えて障害者を雇用している事業主に対して、申請に基づき国から調整金が支給される制度です。ただし、対象は常用雇用者数が201人以上いる月が年度(4月~翌年3月)に5ヵ月以上ある事業主です。支給金額は法定雇用障害者数を超えて雇用している雇用障害者数×27,000円ですが、常用雇用者数が200名以下の月数分も含めて計算され支給されます。

報奨金制度とは、常用雇用者数が200名以下の月が年度に8ヵ月以上あって障害者雇用調整金制度の対象にならない事業主であっても、法定雇用障害者数を超えて障害者を雇用していることに対して、申請に基づき国が報奨金を支払う制度です。

 

Ⅴ.最後に

平成25年4月1日から、障害者雇用率が引き上げになり、民間企業では2.0%になります。そのため、常時雇用者数が50名の事業主も来年4月1日から対象になります。 対象になった場合には毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告し、障害者雇用推進者を選任する努力義務が課せられますのでご注意ください。この法定雇用率の引き上げに伴い、11月27日付け朝日新聞朝刊の記事によれば、人材紹介会社に身体障害者の求人依頼が殺到しているそうです。従業員数が多くなればなるほど、月額5万円(年間60万円)×未達成人数分の支払いが課せられるため、対応を急いでいるのでしょう。また、身体・知的障害者だけではなく精神障害者の雇用も義務付ける検討が厚労省で始まっています。中小企業においても、これらの動向を踏まえて障害者雇用の取組みを検討していかなければならなくなるでしょう。

私が所属している社労士会船橋支部では、来年2月、障害者雇用を積極的に進めている川崎市にある日本理化学工業株式会社を見学する予定です。ベストセラーになった「日本で一番大切にしたい会社」という本の中で紹介されているチョークを作っている従業員数70名ほどの中小企業製造業です。障害者雇用にどのように取り組んでいるのか、会社見学の感想等も含めまたご紹介したいと思います。

 

以上