就業規則の作成・変更について

プチ研修

平成23年12月

就業規則の作成・変更について

 

労働基準法は、事業場単位で常時10人以上の労働者を使用する使用者に対し、

☆ 労働条件を統一的に定めた就業規則の作成

☆ 就業規則の行政官庁に対する届出

☆ 就業規則の労働者への周知

を定め、罰則付き(違反の場合30万円以下の罰金)で使用者の履行を義務付けています。

 

Ⅰ.就業規則に記載する事項

1.必ず記載するもの

① 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務がある場合は就業時転換に関する事項

② 賃金の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切および支払いの時期と昇給に関する事項

③ 退職に関する事項

 

2.制度として設ける場合に記載するもの

① 退職手当(退職金・退職年金等)に関する事項

② 臨時の賃金(賞与等)および最低賃金に関する事項

③ 労働者に負担させる食費、作業用品その他の負担に関する事項

④ 安全および衛生に関する事項

⑤ 職業訓練に関する事項

⑥ 災害補償および業務外の傷病の扶助に関する事項

⑦ 表彰および制裁に関する事項

⑧ その他当該事業場の労働者のすべてに適用される事項

 

3.任意に記載するもの(社訓、社是、服務規律等)

 

また、届出の際は、事業場の中に労働者の過半数で組織する労働組合があればその組合の、無ければ労働者の過半数から選ばれた代表者の、当該就業規則に対する意見書を添付する必要があります。変更についても同様です。

 

Ⅱ.トラブル例 (大洋興業事件・・・大阪地裁判決、昭和58年7月19日)

会社を退職した従業員が、就業規則の規定により退職金を請求したところ、会社が当該就業規則の効力は無いとして、その支払を拒否し訴訟となった事件。

 

(内容)

この会社は設立後、就業規則を届出ていましたが、途中で映画館→スーパーマーケットへ業種転換したにもかかわらず、就業規則の変更手続きを怠っていました。会社は「当該就業規則は形式だけのもので、労働者代表も社長が指名し他の従業員に対して周知もしておらず、退職金を請求した者は今までいない、業種転換前の就業規則に効力は無い」と主張しましたが、裁判所は従業員の退職金請求を認めました。

 

現在では個別労使トラブルの増加もあり、裁判前の調停や和解をめざす労働審判制度も出来ました。また、この他にも労働者にとっては気軽に申し込むことのできる、法律に則した紛争解決手段が用意されています。

 

なお、従業員とは労働契約書を結んでいるから大丈夫ということには、残念ながらなりません。なぜなら「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準による」と労働基準法の第93条に定められているからです。

現状に合わない、形式だけの就業規則になっていないか早急に見直しをすすめ、合わないものは変更し、きちんと労働者の過半数を代表する者の意見書をつけて行政官庁に届出しておきましょう。