年次有給休暇とは

プチ研修

平成21年8月

年次有給休暇について

 

①年次有給休暇とは

労働基準法第39条1項において、「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」とされ、労働者の継続勤務に伴う有給休暇の権利を法律で与えています。これは、法定の休日とは別に労働義務のある日に賃金を保障した休暇を与えることにより、労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的としています。

 

②年次有給休暇の発生要件

雇入れの日から起算して6ヵ月間以上継続勤務しており、全労働日の8割以上出勤していること。

(労働基準法に定める労働者であれば、社員やアルバイトなどの雇用形態にかかわらず全ての者が該当します。)

なお、継続勤務とは労働契約の存続期間すなわち在籍期間をいい、出勤には当然ながら早退や遅刻した日も含めます。また法律上、次の期間についても出勤したものとして取り扱います。

イ.業務上の負傷・疾病による療養のための休業した期間

ロ.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」で規定される育児休業または介護休業をした期間

ハ.産前産後の休業期間

ニ.年次有給休暇を取得した期間

 

③付与について

労働基準法第39条4項では、「労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」とあり、有給休暇の取得については労働者に時季を指定する権利を認めるとともに、一方では条件付きで使用者の時季変更権を認めています。ただし、使用者の時季変更権の行使は、要員確保が間に合わず事業に支障が生じる等の具体的理由が必要となりますので注意が必要です。

 

④付与日数

原則として、雇入れ日より6ヵ月間継続勤務で10日、その後は継続勤務が1年増えることにつき1日ずつ増えて、3年6ヵ月目以降は2日ずつ増え、6年6ヵ月目以降は毎年20日間が付与されます。また、当該年度に付与された日数は翌年度に限り繰り越されます(労使間で特約がある場合を除く)。

なお、アルバイトやパートなど勤務日数が通常の労働者に比べて少ない者であっても、その者の週所定労働日数等に比例して年次有給休暇が付与されます。(例えば、週1日勤務の労働者なら6ヵ月間継続勤務で1日の権利が発生します。)

 

④年次有給休暇取得に対する不利益取扱いの禁止

使用者は年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないとされています。(労働基準法附則第136条)

ごくたまに見かけますが、有給休暇を取得したのでその月の精皆勤手当を支払わないとしている企業があります。これは不利益取扱いに当たります。

 

⑤年次有給休暇をめぐる問題

年次有給休暇をめぐって今まで頂いたご質問やご相談には、例えば「間もなく復帰予定の育休中の社員から、残った有給分(40日)を消化して退職したいとの申し出があり、与えなければいけないのか? 有給を取得されると業務に支障が生じるので、有給を使わないよう時効で消滅する分の80%を会社で買い取って良いか(就業規則に記載して良いか)? 本人から申し出があり、業務上の休業補償に代わって有給休暇を取得させても良いか? 定年後に週3日の嘱託として再雇用した者への付与日数はどうなるのか? 有給休暇の申請書にその取得理由を書かせても良いか? 有給休暇を取得して周りに迷惑をかけたので賞与の金額を下げても良いか? 等色々とありました。これらの答えとしては、基本的に法律や法律の立法趣旨に従って判断して頂ければ問題ないと思いますが、労働者の申請状況によっては、甘えを許さないよう会社として毅然とした対応を取らなければならないと思います。

例えば、退職に際し残った有給休暇を全て消化したいと申し出ながら、既にその休暇取得中に次の勤務場所に勤める人もいます。このような労働者には、在職中の兼業禁止に該当し誠実労働義務を尽くしていないのですから、場合によっては退職日を遡って訂正し支払った有給休暇分を会社に返金させる、またはそこまでしなくても始末書を提出させる等なんらかの対応が必要だと思われます(就業規則等で兼業禁止事項が規定されていないとダメですが・・・)。

 

⑥今後の対応として

社員の人数が増えてくると、当然有給休暇を取る労働者も増えてきます。ある会社は退職の際に残った有給休暇を全て消化して辞めるという慣習が出来てしまい(?)、退職の申し出から2ヵ月後に退職する方がしばしばいらっしゃいます。この退職の際にまとめて消化するという行為が悪いのかどうかは、業種業態の傾向、各企業の考え方の違いがあり一概にどうこう言えませんが、当然社会保険料も2ヵ月分生じます。また、社内の引継ぎ等に支障が生じる可能性もあります。

以上から、今後はやはり有給休暇の取得を必要に応じて勧めることも大切ではないかと存じます。業務に支障が生じない効率の良い社内体制を整備する、また社員の健康への配慮や活力維持につながる施策として、年次有給休暇を検討する価値があるのではないでしょうか。某社長は「有給取ってもいいから、その分3倍仕事しろ」と言っていました(笑)。ちなみに、労使が協定を結んで、年次有給休暇を年間を通して計画的に付与する方法もあります(個人別、グループ別など)。前もって年末年始や業務の閑散期などに付与することにより、効率的に有給を消化することが可能です。

 

<参考までに>

労働基準法の改正により、平成22年4月から年次有給休暇を時間単位で取得できるようになります。また、同じく時間外労働の割増賃金率が、1ヵ月60時間を超えるものについては現行の25%から50%に引き上げられますが、その引き上げた差の25%については割増賃金に代えて有給休暇付与で対応することが可能になります(※両方とも労使協定が必要です。なお時間外の割増賃金率の引き上げについては、中小企業は施行から3年間経過後に改めて検討される予定です)。

 

  • 罰則●

労働基準法第39条(年次有給休暇)に違反した場合には、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金 (労働基準法119条1項)