プチ研修
平成23年1月
メンタルヘルスケア その2
前回では、心の病に罹患する労働者が増えていること、また併せて精神性疾患の労災請求も増加しており、使用者は法律上の義務だけではなく、企業防衛および生産性向上の観点からも、労働者の心の健康対策(メンタルヘルスケア)に努める必要があることについてご説明いたしました。
今回は、では実際にどのようにメンタルヘルスケアを進めていけばよいのか、厚労省から発表されている以下の指針をもとにご案内したいと思います。
<労働者の心の健康の保持増進のための指針>
2000年に厚労省は「事業場における労働者の健康の保持増進のための指針」を公表しました。2006年には「労働者の心の健康の保持増進のための指針」へと改正されましたが、この指針の中で事業者(事業主)は衛生委員会等で十分調査審議を行って「心の健康づくり計画」を策定し、その実施に当たっては次の「4つのケア」が継続的かつ計画的に行われることが重要とされました。
<4つのケア>
①セルフケア 従業員にメンタルヘルスに関する教育・研修や情報提供を行って、従業員自らがそのストレスに気がついて適切に対応できるようにすること。
②ラインによるケア
職場のリーダー(管理監督者)が主体となって、職場環境(作業環境や労働時間、仕事の質や量、人間関係など)の改善を図っていく、また従業員から相談があった場合に適切な対応を行っていくこと。
③事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内産業保健スタッフ等が、①のセルフケアや②のラインによるケアが効果的に実施されるように支援を行っていくこと。具体的には情報の提供を行う、一般・管理職研修を開催する、あるいは個別面談に対応するなどして従業員を支援していく。
※事業場内産業保健スタッフ等とは、産業医、衛生管理者、保健師、安全衛生推進者又は衛生推進者、人事労務管理スタッフ等を指します。
④事業場外資源によるケア
事業場内産業保健スタッフ等では対応できない問題などについて、必要に応じて社外の専門機関や専門家を活用し支援を受けること。
※社外の専門機関や専門家とは、地域産業保健センター等の相談機関、精神科や心療内科等の医療機関又は医師、カウンセラー等を指します。
以上が必要とされる4つのケアであり、企業のおかれた状況によって、出来る範囲で上記の取り組みを進めていくことが肝要だと思います。特に②のラインによるケアが企業規模に関係なく大切でしょう。
<②のラインによるケアにおける、職場のリーダーの役割について>
職場のリーダーの役割としては、以下のようなことが考えられます。
① 部下の様子に気を配る。 (部下の変化を見落とさない。遅刻、欠勤が多い、表情が暗いなど)
② 適切な問いかけをする。 (睡眠はとれているか、体調不良がないかなどの問いかけをする)
③ 部下の話を積極的に傾聴する。 (傾聴に徹し、叱咤激励をしない。部下の価値観で考える)
④ 必要に応じて関係者と連絡を取り合う。 (家族、親族、人事・医療スタッフと連携して対応する)
⑤ 必要に応じて医療機関の受診を勧める。 (必要であれば、家族や上司が同伴して受診させる)
⑥ 必要に応じて部下の仕事量の調整を行う。 (一時的に仕事を減らして、部下の不安を取り除く)
⑦ 必要に応じて職場の人間関係や雰囲気の改善に努める。(原因が人間関係ならば、その改善に努める)
⑧ 休職を余儀なくされた部下に対し、安心して療養に専念できるよう支援する。 (④と同様)
⑨ 部下が職場復帰した後も仕事に適応できるよう支援する。(主治医と連携して、必要な配慮を行う)
当たり前のことですが、企業が従業員に対してメンタルヘルスに関する情報提供を行うとともに、職場のリーダーの適切な対応が、その予防や再発防止のための重要な鍵になるでしょう。
以上