メンタルヘルスケア その1

プチ研修

平成22年11月

メンタルヘルスケア その1

 

現在、日本では年間に3万人以上の方が自ら命を絶っています。昨年の自殺者は32,845件(男23,472件、女9,373件)。バブル崩壊以降の1993年から、一時3万人を切ったこともありましたが、依然として増加傾向にあります。職業別では、被雇用者・勤め人が9,159人、自営業・家族従事者が3,202人となっており、勤労者全体では12,361人で自殺者全体の37.6%にのぼっています。

 

ちなみに、昨年の交通事故による死亡者数は全国で4,914件。この数字と比較すれば交通事故死亡者の2.5倍以上の数の勤労者が自殺で亡くなっていることになります。また、命を落とすまではなくとも、病気療養中の方など、たくさんの勤労者が心に病を抱えて生活していることが理解できます。

 

そして、心の病に罹患する人の増加に伴い、それは本人の素因だけの理由ではなく業務にも原因があると認められて労災として取り扱われる事案も増えています。昨年度の精神障害等による労災補償請求件数は1,136件(内自殺157件)あり、過去の年度分も含めて昨年度中に認定されたものが234件(内自殺63件)にのぼりました。全体としてみれば、まだ認定される件数の割合は低い状況ですが、当事務所の近く、船橋労働基準監督署においても昨年度は精神性疾患に伴う労災請求が13件あったそうです。

 

なお、昨年度の業種別の認定件数では、多い順に製造業43件、卸・小売業36件、建設業26件となっており、年齢別では30歳代が75件で全体の約3割を占めています。

 

一方、法律の面では、労働安全衛生法においては、労働者の安全と健康を確保することを事業者の責務としています。また、過重労働がメンタルヘルス不全を引き起こす要因の一つとされていることから、2006年度(中小企業は2008年度)から、長時間労働者に対して、事業者は医師による面接指導を実施することを義務付けられました。

 

この長時間労働者とは、時間外・休日労働時間が1月あたり100時間を超えている者を指し、80時間を超えた者に対しても面接指導を実施するよう努めなければならないとされたものです。

 

また、労働契約法においても、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮を使用者に課しています。これは安全配慮義務と言われる使用者の責務です。

 

しかしながら、労働者の心の健康対策は、事業者(使用者)が負っている法令上の義務だけの問題ではありません。職場の生産性の向上にもつながり、企業の社会的信用を守るリスクマネジメントの視点からも重要です。

 

そして、企業の地道な取り組みの輪が、不幸な人を一人でも減らすことにつながっていくのではと考えます。

以上