労働保険料の申告について

プチ研修

平成24年5月

労働保険料の申告について

 

Ⅰ.労働保険とは

  労働保険料の対象となる労働保険とは、労災保険および雇用保険のことを言います。労災保険とは、従業員が仕事あるいは通勤が原因で怪我や病気、あるいは亡くなってしまったときなどに必要な給付を事業主に代わって行う制度です。雇用保険とは、一定の基準に該当する働き方の従業員が退職後に職探しをするときなどに必要な給付を行う制度であり、採用が困難な者を採用するなど、雇用の安定および従業員の能力開発に寄与した事業主への奨励金支給制度もあります。

Ⅱ.保険料の申告について

労働保険の保険料は、原則として年に1回申告に基づいて金額が決められます。労働保険料の対象期間は1年間であり、4月1日~3月31日までの年度ごとに保険料を算定します。対象期間中に支払われた賃金をもとにその年の保険料を確定し、翌年度の賃金支払額の見込みをもとに概算で保険料を算出し、まとめて申告します(労働保険の年度更新手続き)。申告および納付時期は6月1日~7月10日までとなっており、申告が遅れると事業主の代わりに政府が保険料の額を算定し(保険者算定)、追徴金(保険料の10%)を課すことがあります。

 

Ⅲ.概算保険料の分割納付について

概算保険料については、一定の基準に該当すれば年3回に分割して納付することが可能です。継続事業(事業期間が定まっていない事業・・・通常はほとんどこれに該当)では、概算保険料が40万円(労災または雇用保険いずれか一方の保険関係のみ成立の場合は20万円)以上であれば分割納付できます。また、労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は金額にかかわらず分割納付が可能ですが、委託手数料が別途必要になります。

 

Ⅳ.保険料申告に当たっての注意点

労働保険料を申告するにあたり注意すべきことは以下の二つです。

①労働保険対象者の範囲を明確にする

当たり前のことですが、労働保険は労働者を対象としています。原則として、事業主や法人の役員あるいは事業主と同居の親族は対象にはなりません。ただし、法人の役員であっても代表権や業務執行権が無く、指揮監督を受けて働き賃金を得ている者、また事業主と同居の親族であっても、常時同居の親族以外の労働者が別にいて、就労の実態がその者と同様(始業・終業の時刻や賃金計算等が同じ)であれば労災保険上の労働者となります。出向労働者については出向先で労災保険を、出向元で雇用保険を申告します。その他、労働者なのか外注なのか実態に応じて確認が必要な場合もあります。

②対象となる賃金の範囲を明確にする

労働保険料の対象賃金として算入する・しないものを明確にします。年功慰労金や結婚祝い金、出張旅費、休業補償費、解雇予告手当などは算入しません。その反対に、月例賃金以外に一時金(賞与)などを支払った場合にはそれを算入します。労働保険料の申告についても、社会保険や税金と同様に監督官庁による調査が行われますので適正申告をお願いします。

 

Ⅴ.お知らせ

  紙面の都合で詳しく記載できませんが、労災保険にはメリット制があります。これは常時100人以上の労働者がいる事業場か、事業の種類ごとに一定の人数がいる事業場を対象に、労災保険料率が増減する制度です。メリット制があるのは、原則として人数に関わりなく事業の種類ごとに労災保険料率が定められていますが、事業主間の災害防止努力の如何等によって災害に多寡が生じるため、具体的公平を期すために一定規模以上の事業場を対象に行われているものです。1年ごとではなく連続する3年度を対象に保険給付額と保険料支払額から算定します。

最後に、今年度は雇用保険料率の改正がありましたが、労災保険料率の改正もありました。別添の労災保険率表をご確認ください。

以上