労働時間について・・・その2(法定労働時間と変形労働時間制)

プチ研修

平成21年4月

労働時間について・・・その2 (法定労働時間と変形労働時間制)

①法定労働時間とは

原則として、法定労働時間は次のとおりです。

【 法定労働時間 = 1週間は40時間、1日は8時間 】

 

この法定労働時間は、一部例外を除き罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)をもって義務化されており、当事者を拘束します。例えば労働者と1日9時間の労働契約を結んでも、8時間を超えた1時間分については労働者を拘束できず、また仮に9時間働かせた場合には1時間分の残業代が別途必要になります。(民法の契約自由の原則より労基法が上回るため。)

 

そこで、労働時間を設定するときには、この法定労働時間の範囲内に収める必要があり、同じく労基法で定められた変形労働時間制という制度を利用して、なんとか法定労働時間内に収まるように労働時間を設定するケースがあります。

 

②変形労働時間制とは

変形労働時間制とは、簡単にいえば、ある一定期間を平均して週40時間以内に納まるように労働時間を設定する制度のことです。大きく4つの制度があり、制度ごとに導入には様々な要件があります。(基本的な要件は別紙をご覧ください。)

(1)1ヵ月単位の変形労働時間制    (2)フレックスタイム制

(3)1年単位の変形労働時間制     (4)1週間単位の非定型的変形労働時間制

※(2)は労務管理上の問題、(4)は対象業種と人数の制限があるため、通常はあまり検討しません。

 

③法定労働時間内への収め方について

まず、1日の労働時間を確認します。始業から終業まで途中休憩を差し引くと何時間になるのかを確認します。このとき労働時間が8時間を超えていたら、原則は8時間になるように労働時間を設定します(但し、繁忙期に増やすことは可能)。次に予定している休日を年間カレンダーに○を付けて把握します。その上で、週40時間以内に収まっていない週があれば、暦月単位等でみて週40時間以内に収まるかどうかを確認(1ヵ月単位の変形制導入の検討)。それでも収まらなければ、3ヵ月、半年、年間を通して週40時間以内に収まるかどうかを確認します(1年単位の変形制導入の検討)。こうして業務の繁閑に応じて休憩時間増や拘束時間減、または所定休日増も検討して、一定期間を平均して週40時間を達成できるよう設定していきます。

例.休憩を1日5分増やす、または終業時刻を5分繰り上げるだけで、1日の労働時間が7時間の会社なら年間休日換算で3日分に相当し、法定労働時間のクリアに近づきます。

 

以上が、変形労働時間制活用の一例ですが、大切なことは、あらかじめ前もって一定期間内の各週、各日の所定労働時間を決めておき、それを労働者に伝えておく必要があるという点です。会社のその都度恣意的な運用では労働者の利便性の向上にもつながらず、また法律の要件にも該当しないため労基署の是正勧告対象となるケースもあります。

 

<変形労働時間制の法律趣旨>

変形労働時間制は、労働基準法制定当時に比して第三次産業の占める比重の著しい増大等の社会経済情勢の変化に対応するとともに、労使が労働時間の短縮を自ら工夫しつつ進めていくことが容易となるような柔軟な枠組みを設けることにより、労働者の生活設計を損なわない範囲内において労働時間を弾力化し、週休2日制の普及、年間休日日数の増加、業務の繁閑に応じた労働時間の配分等を行うことによって労働時間を短縮することを目的としたものであること。        (昭63.1.1基発1号)