取締役の雇用保険加入について

平成28年6月

プチ研修

取締役の雇用保険加入について

 

今月は、取締役の雇用保険加入についてご案内したいと思います。

 

Ⅰ.取締役でも雇用保険に加入できる

雇用保険とは、事業主と雇用関係を結んでいる者が入る保険です。雇用とは、民法623条で「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」とされ、簡単に言えば雇用される者=労働者であり、労働者が雇用保険に加入します。

一方、取締役とは、会社法348条で「取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する」とされ、簡単に言えば事業の運営・決定に携わる者であって労働者ではなく、本来雇用保険とは相容れない立場にあります。

ところが、現実には取締役であっても業務執行権を持たず、業務執行権を持つ他の取締役(代表取締役等)の指示に従い働く者がいます。そこで、当該取締役の実態に即して、労働者性が強ければ雇用保険に加入する者として認められることになります。

 

Ⅱ.手続きに当たっては

雇用保険の届出用紙に「兼務役員雇用実態証明書」というものがあります。これは、当該取締役に就業規則等の適用があるのか無いのか、出勤義務はあるのか無いのか、役員としての仕事および労働者としての仕事は何だとか、役員の報酬および労働者の賃金はいくらだとか記入する用紙ですが、これに記載をして、必要な資料を用意し公共職業安定所に提出します。必要な資料とは以下の物です。

 

(登記簿謄本、就業規則、給与規定、役員報酬規定、賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、人事組織図、定款、議事録等)

 

出退勤の拘束があり、賃金が支払われていて、その金額が役員報酬よりも上回っていれば、通常は問題なく雇用保険加入者として認められると思います。

尚、「兼務役員雇用実態証明書」を提出する際には、会社で保管している対象労働者の様式4号用紙(氏名変更・資格喪失届)を持参します(すでに雇用保険加入者の場合です)。そして、公共職業安定所で審査の上、通常は後日郵送で「〇年〇月〇日兼務役員実態確認済」の受付印が押印された様式4号用紙と、兼務役員雇用保険被保険者確認通知書が事業所に届きます。

 

Ⅲ.最後に

上記のとおり、実態上において労働者性が強ければ雇用保険の加入は特に問題はありません。取締役といっても、工場長や現場監督者等、労働者の身分もお持ちで働く方も大勢おられますので、必要であれば手続きを済ませておきましょう。

尚、労働保険料の申告については、役員報酬分は含めませんので、あくまで賃金のみを申告します。

また、当たり前ですが退職時に離職票を作成する際も、賃金のみを記載します。

以上