平成28年4月
プチ研修
労働者の立場からみた社会保険への加入について
今月は、労働者の立場からみた社会保険(健康保険・厚生年金)への加入について、個人的見解を述べたいと思います。
Ⅰ.厚生年金に加入する企業が増えている
現在、厚生年金に加入する企業が増えています。本来、法人企業や従業員が5人以上の個人企業(一部業種除く)であれば社会保険への加入は法律上の義務であり当たり前なのですが、実はまだ手続きしていない対象企業が全国に約79万社あると報道されています。
厚生労働省は、これを改善するために緊急の事業所調査やそれに基づく加入指導を行っており、その影響と思いますが、うちのような小さな事務所でも今年に入って4社ご相談いただき、3社加入手続きを済ませました。尚、厚生年金に加入=健康保険にも加入することとなります(一部例外あり)。
Ⅱ.労働者の立場から社会保険(健康保険・厚生年金)への加入について考えてみる
加入手続きをする上で、以前から勤務している社員が難色を示していると会社から言われることがあります。やはり保険料負担が大きいというのがその理由です。特に、何年も国民年金を未払いだった方、また60歳を過ぎて年金受給中の方は加入することで年金額が減ってしまうこともあり、納得しがたいお気持ちはよくわかります。
さりながら、よく考えてみると社会保険への加入はそもそも任意ではありません。皆が保険料を出しあい、収入に応じた相互扶助の精神で行われている制度です。保険料の半分は企業が負担しています。病気で休みが続けばお給料の約3分の2の金額がもらえ、産前産後や育児中の一定期間は保険料免除の制度もあります。また、産前産後の一定期間もお給料の約3分の2の金額がもらえます。これらの制度は原則、市区町村の国民健康保険にはありません。※傷病手当金や出産手当金の受給には諸要件あり。
また、市区町村の国民健康保険は子供も含めて全ての人が保険料を負担しますが、社会保険である健康保険については被扶養者の保険料負担はありません。また一定の配偶者は国民年金保険料もかかりません(払ったものとみなされ免除)。それだけでなく、社員が重い障害を負うあるいは亡くなってしまった場合に、障害厚生年金や遺族厚生年金の制度もあり、当然、国民年金よりも手厚くなっています。
たまに、収入が多い方で長い間病院に行っていない人がいます。収入に応じて保険料を出しあいますから、その方は多くの健康保険料を毎月払っています。一方、まだ30代で収入は少ないですが、お子さんをたくさん扶養している方もいます。その方は企業が社会保険に加入してくれるお蔭で、また相互扶助のお蔭で健康保険料を少なく済ませることができます。年金を受給されている方も、企業や働く世代が負担する年金保険料に支えられて、永続的に年金が受給できるのです。
Ⅲ.最後に
社会保険に加入することは企業にとって大きな負担増となります。それでも、法律に従い加入することで社員の保険料負担を少なくし、また給付を厚くし、我が国の社会保障制度に多大なる貢献をしています。労働者である社員はその有り難さを少しでも感じることが必要ではないでしょうか。もし、この国が掌る社会保険制度がなければ、貧富の差は益々開くことと思います。
ただし、出来れば企業規模に応じた保険料低減策等、中小零細企業が支払える仕組みを国は検討して頂けたらと考えます。
以上