中小企業の労務管理について

平成27年12月

プチ研修

中小企業の労務管理について

 

今月は、中小企業の労務管理について考えてみたいと思います。

 

Ⅰ.労務管理とは

労務管理とは、人の採用~退職に至るまでの労務(ヒトが働くこと)に関する管理(マネジメント)のことです。採用、配置、給与、服務、昇進、教育、休暇、安全、福利厚生、退職その他様々な人に関するマネジメントが企業には存在します。それを企業は、経営方針や経営の規模等に応じて適宜行っています(※管理とマネジメントは厳密には若干意味が違いますが、ここでは同義語として取り扱います)。

 

中小企業の人材難が言われる昨今ですが、考えてみれば昔から中小企業は人材難です。大企業と違い労務管理にコストをかけられないのがその大きな理由だと思います。求職者からみれば労務管理のコストが低い企業に喜んで応募することは稀でしょう。平成27年10月の有効求人倍率(有効求人数を求職者で割った数字)は全国平均で1.24倍(正社員は0.77倍)と徐々に上がってきています。地域や業種によって当然差があり一概には言えませんが、求職者の選択肢が少しずつ増えている点では中小企業にとって今後もより厳しくなると考えられます。

 

そのような中で、有望な人材を採用し戦力として活かしていくには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。以下で個人的見解を述べたいと思います。ただし、正解は各社各様あると存じます。

 

Ⅱ. 中小企業の労務管理について( 一社労士の個人的見解 )

当たり前のことですが、『企業が利益を増やすこと』が一番大切だと思います。利益が上がれば投資に回せます。利益が上がらなければ、社員が安心して働ける給与も支払えません。利益が上がる取組みをすること(利益が上がる仕組みを回すこと)が第一だと考えます。その上で、

1.働きぶりに応じた、かつ運用しやすく、安心できる給与制度の導入(職務・生活給、手当、賞与等)

どんなに立派な制度でも、運用できなきゃ意味がありません。運用できる、頑張った人が報われ、かつ社員の生活が保障される制度が望まれます。また会社が支払える制度でなければなりません。

2.適正な評価制度の導入(仕事の成績、能力 + 同僚とのコミュニケーションや整理整頓等も評価)

当たり前のことを評価することが大切だと思います。会社は個人プレイだけでは継続していけないのではないでしょうか。周囲が働きやすいように取り組んでいる方も評価しましょう。

3.働き方の選択肢を増やす(フルタイムだけでなく、フレックス・短時間・隔日・在宅勤務等)

昔と違い、仕事とプライベートを両立させたいと考える方が増えています。介護の問題も他人事ではありません。できれば今の時代にあった労働時間の選択肢を与えること、そして労働時間ではなく会社への貢献度に応じた給与決定が望まれていると思います。

4.研修・教育の実施(新人・管理職等の階層別研修、職種別専門研修、安全・メンタル研修等)

研修できるところはいくらでもあります。社外の人と行うことで客観的に自社の現状を把握することも可能です。また、社内講師を養成する(社員に任せる)ことも能力向上に役立つと思います。

5.福利厚生の充実(法定および法定外福利厚生、特別休暇、提携施設等の活用「利用補助」等)

社会保険等の法定福利は当然として、上乗せ労災保険やリフレッシュ休暇制度等、普段は必要なくてもいざという時に社員が安心あるいは活用できる制度があれば喜ばれると思います(家族にも)。

 

Ⅲ.中小企業の良さについて

中小企業は経営者の胸三寸でフレキシブルに対応できるところが良いのではないでしょうか。朝礼暮改と言われるかもしれませんが、良いと思ったことは即実行していけるところが中小企業の良さですし、経営者の人となりが企業の盛衰を握っているのだと思います。

以上