建設業の労災保険・社会保険について

平成27年8月

プチ研修

建設業の労災保険・社会保険について

 

今月は建設業の労災保険・社会保険について簡単にご説明いたします。

 

Ⅰ.建設業の労災保険

建設業の労災保険は、それ以外の一般的な事業場と労災事故に遭ったときに受けられる保険給付の内容は同じですが、保険の成立の仕方が異なります。

 

労災保険は建設現場ごとにそれぞれ保険を成立させます。一つの建設会社(元請)が10カ所の工事現場で工事を行っているのであれば、原則として10カ所でそれぞれ労災保険成立手続きを行い、労災保険番号を取得します(ただし、概算保険料が160万円未満かつ請負金額が税抜きで1億8千万円未満の工事で、会社所在地のある都道府県+隣接する一定のエリアで行われるものであれば、まとめて申告しますので同じ労災保険番号になります)。

 

そして元請だけではなく、下請・孫請等にいたるまでその現場で働く人が労災事故に遭った場合には、元請が成立させた現場の労災保険を使います。例えば、建設現場に『労災保険関係成立票』と書かれたプレートが掲げられているのをご覧になったことがあると思いますが、あそこに記載されている労働保険番号が労災保険番号です。

 

よって下請工事専門の建設会社は労災保険の加入義務がありません。ただし、その下請工事専門の会社の取締役等が元請現場で働く場合には、労働者ではないため元請の労災保険が使えません。そこで下請工事専門の会社であっても自ら元請工事を行う見込を立て、取締役等は労災保険に中小事業主等として特別加入するケースもあります。← 元請現場での労災事故も自らの労災保険番号を使用します。

 

なお、労災保険はそこで働く人の賃金額をもとに保険料を算定しますが、建設工事のようにいくつもの会社が現場で作業している場合には賃金額の算定が困難です。よって元請金額に工事の種類に応じて決められた労務費率を乗じて賃金額とみなし、労災保険料を算定するケースが一般的です。

 

Ⅱ.建設業の社会保険

社会保険の加入は、建設業もそれ以外もすべて同じ基準に基づいて行われます。法人であれば代表者1人でも、個人であれば従業員5人以上で加入します。

 

最近は、国が建設業の社会保険加入促進に力を入れています。国土交通省が他の産業と比べて低い建設業の社会保険加入率を平成29年度には企業単位で100%に、労働者単位では製造業相当の加入状況にするべく各種の取組を行っています。例えば、建設業の申請・更新時に加入状況を確認・指導する、公共工事に必要な経営事項審査において減点幅を拡大する、元請に対して平成29年度以降は未加入企業を下請企業に選定しない取扱いを求めるなど、社会保険未加入企業への対策を強めています。

 

Ⅲ.最後に

労災保険にしても社会保険にしても、働く人にとって最低限必要なセーフティネットの役割を担っています。保険料の負担は大きなものがあり誠に大変ではありますが、法令順守の取組が企業・個人を、また建設業全体を良い方向に導いてくれることを望みたいものです。

 

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以上