安全衛生

プチ研修

平成23年2月

安全衛生

 

事業場の安全衛生への配慮は、従業員が活き活きと働くために必要なものです。また、それのみならず、巡り巡って生産性の向上並びに企業を守ることにもつながります。

 

たとえば、働いている従業員が業務中に事故を起こしてしまう危険性はないでしょうか? 建設現場で作業中の者が足を滑らして携行品を落下させてしまう、製造現場で作業中の者が手を機械に巻きこまれる、配送作業中の者が荷車が横転し怪我をする、重量物の運搬中に腰を痛める、調理作業中の者が油の飛散により火傷を負う、皿が割れて手指を切る。また、事務所の中であってもフロアの段差につまづく、ドアの開閉時に衝突する、棚の上の荷物が落下して怪我をする等、色々な事故が予想できます。

また、事故ではなくても、コンピューター作業者の視力の低下、タバコの受動喫煙や乾燥のし過ぎによる鼻や喉の痛み、インフルエンザ等の感染病に罹患した者への対応といったことも必要な安全衛生面への配慮と言えるでしょう。

 

ビル建物等の消毒作業を行っているイカリ消毒という会社がありますが、まだ設立5年目で従業員が15名ほどであった昭和38年に、消毒作業に出かけたデパートにおいて大惨事を引き起こしました。それは従業員が休憩中にタバコを吸い、その際に使ったマッチをよく消えているか確認もせずにポイと投げ捨てたところ、そばに置いてあった揮発性の薬剤に引火、また運悪く近くに置いてあった塗装屋さんのシンナーにも引火して大火事を引き起こしてしまったものです。死亡者も出る事態となり、まだ若年でもあった経営者の兄弟は死んで罪を償おうとまで考えたそうですが、謝罪に行ったデパートのオーナーに逆に励まされ、二度とこのような事故を引き起こすことのないよう固く誓って、よい仕事をするよう今日まで頑張ってこられたそうです。その中で、自身も知らなかった危険物取扱主任者という資格を取得することから始まって、衛生管理者をはじめ今日まで数多くの資格を取得し、それを事業経営の上で役立ててこられました。その結果、48年経った現在では、資本金1億4,448万円、従業員745名を抱えて全国で環境エンジニアリング事業を旗印にご活躍されています。

 

また、話は変わりますが、東京の田町に厚労省所管のあんぜんミュージアム(産業安全技術館)という施設があります。そこでは労災事故につながるヒヤリハット事例等のビデオ視聴、安全衛生に関する講話の受講、また産業安全の歴史を展示物をもとに学ぶことができますが、昨年社労士会の研修で伺ったときに講師の方がおっしゃっていたことが頭に残っています。それはある機械の展示物の前でしたが、その機械には①と②という二つのスイッチがあって、両方を押さないと機械が動かない仕組みになっていました。なぜ二つのスイッチになっているかというと、それは安全に配慮するためだそうです。しかし、講師の方の話によると、わざと二つスイッチを作ってあるのにもかかわらず、この二つのスイッチを一度に両方押せるような道具を考えてしまうのが人間なのだそうです。その結果、労災事故が起きる可能性が高くなるわけです。マニュアル通り間違いなく行えば事故は起きません。

 

人間は生産性を上げようとするばかりに安全衛生面への配慮を怠ってしまうことがあります。しかし、それは本人ばかりか周りの従業員や、あるいはお客様に対しても不利益を生じる恐れが出てきます。これは何も製造や建設等の現場に限りません。営業職や事務職でも同じです。感染力の強い疾病に罹患しているのに会社に何も申し出ない者、免停中なのにクルマやバイクで通勤する者等、大きな問題に発展しないため気づかないケースは結構あるのではないでしょうか?

 

明るい大きな挨拶と、素早く的確な連絡・報告・相談、掃除や整理整頓の徹底も同様に安全衛生面の配慮につながります。配送などの現場で、明るい大きな挨拶運動に取り組んだ結果、事故が減ったという話を聞いたことがあります。また、掃除や整理整頓を徹底した結果、事故が減るとともに会社の利益が出るようになったという話も多く耳にします。

 

安全衛生について考えることは、会社の生産性向上にもつながってくるものです。

 

以上