労働契約法の改正について

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平成25年2月

労働契約法の改正について

 

Ⅰ.労働契約法とは

労働契約法とは平成20年3月から施行された法律で、使用者と労働者が労働契約を結び履行する上での基本ルールが定められたものです。改正前からの主な内容は以下の通りです。

 

・労働契約の原則について

(労働契約は労使対等の立場で決定する、労働者の仕事と生活の調和に配慮する等)

・労働契約内容の理解促進と安全配慮義務について

(労働契約の内容について労働者の理解促進を図る、労働者の安全に配慮する等)

・労働契約を変更する場合について

(労使の合意によって契約内容を変更する、就業規則による労働契約変更の手続きについて等)

・使用者の出向命令、懲戒や解雇処分について

(出向命令や懲戒処分および解雇は、権利濫用と認められる場合に無効とする等)

・期間の定めのある労働契約について

(契約期間中の解雇はやむを得ない場合に限定される、契約期間について配慮する等)

Ⅱ.労働契約法の改正について

「労働契約法の一部を改正する法律」が昨年の8月10日に公布されて一部が既に施行され、今年の4月1日から全面施行となります。今回の改正のポイントは、期間の定めのある有期労働契約について新たに3つのルールが規定されたところです。

<3つのルール>

1 無期労働契約への転換(第18条)  ・・・・・・ 平成25年4月1日施行

・有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される。

※平成25年4月1日以降の契約期間から通算5年を超えた場合です。

※ただし、同条(第18条)で、契約期間以外の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)については、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約の内容と同一でよいとされています。

2 「雇止め法理」の法定化(第19条) ・・・・・  既に平成24年8月10日から施行中

・最高裁判例で確立した「雇止め法理」がそのままの内容で法律に規定されたもので、ある一定の場合に使用者による雇止め(有期契約労働者に対する契約更新の拒否)が認められなくなりました。

 

3 不合理な労働条件の禁止(第20条) ・・・・・・ 平成25年4月1日施行

・有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違(賃金や福利厚生などの処遇の差)を設けることが禁止されました。

 

Ⅲ.改正により予想される問題とその対応について

今回の改正により、今後は有期契約の更新が5年を超えた場合に新たな期間契約を結ぶと、労働者から無期契約への申込みがあった場合には事業主はそれを断れなくなります。この場合に、改正法では賃金等の労働条件については従前のままで良いことになっていますが、労働基準法および当該労働契約法の第12条(就業規則違反の労働契約)において、個別の労働契約よりも就業規則が上回るとされているため、就業規則を定めている事業場においては、その就業規則で新たに該当する無期契約者に対して別段の定めをしておかないと、労使トラブルに発展する可能性が高いと思われます。

 

また、契約期間の有る無しで賃金・退職金などの処遇に差を設けている事業所の場合には、期間の定めのない労働者と同じ職務に付き、人材活用も同様で同等の責任があると有期契約労働者が思われた場合に、処遇の差について説明を求められることも考えられますので、対応できるよう職務要件や考課基準に違いを設けておく必要があると思われます。

以上