平成28年3月
プチ研修
労働条件審査について
今月は、労働条件審査について簡単にご案内いたします。
Ⅰ.労働条件審査とは
労働条件審査とは、その名の通り労働条件を審査する取組みのことです。労務監査といったり労働環境モニタリングなどと呼んだりもしますが、内容に違いはありません。この労働条件審査は、現在は主に地方自治体における公共工事や業務委託契約(いわゆる公契約)において取り組みが始まっています。
東京都では新宿区、板橋区、練馬区、江戸川区等、千葉県では市川市、流山市等で行われています。
尚、請負先や受託先である企業が、その雇用する労働者に対して適正に労働条件を定め運用しているのかを確認するだけでなく、問題がある場合にはその是正につながるよう改善提案迄行うのが、社労士会が行っている労働条件審査の特徴です(※ただし、契約内容にもよります)。
Ⅱ.なぜ労働条件審査が必要とされるのか
建設工事だけでなく清掃、警備、設備、調理、窓口受付等々に至るまで、今は広く公共サービスが民間企業に外部委託されています。
競争入札によって入札価格は低落し、企業は利益を上げるため労務費を含めたコストを下げようとします。そこに、社会保険の未加入者の存在や長時間労働による割増賃金の未払いといった問題が生じてしまうことがあります。また、安全面や環境面の配慮も後回しにされるケースがあります。
そこで、定期的に労働条件審査を企業に実施することによって、大きな問題につながる前に対処しようとするのが地方自治体における労働条件審査です。
特に、近年では問題が生じたときに発注者の責任が問われることがあります。発注者である地方自治体は、その法的責任を遵守する及び公共サービスを低下させないため、公契約条例等を定めるor労働条件審査を導入するなどして必要な対策を講じているのです。
Ⅲ.労働条件審査の流れ
公契約に関する一般的な労働条件審査は、まず地方自治体と社労士会で打合せをした後、必要な審査項目を決定し、受託企業に対して法令に基づく規程類を確認、個々の労働者の帳簿類の確認及び適宜ヒアリングを行い、最終的に報告書の作成提出といった流れになります。
※実際には、説明会の実施~最終的な報告書の提出に至るまで、時間をかけて段階を一つずつ踏みながら行われていますが、詳細は割愛します。
最終的に評価する内容としては、①雇用契約と協定等 ②安全衛生関係 ③労働時間等 ④給与計算 ⑤社会保険・労働保険・雇用保険 ⑥法定帳簿等の整備 ⑦ワークライフバランスへの取組状況の把握について、それぞれ具体的な評価基準を設定して評価しているケースがあります(新宿区の場合)。
Ⅳ.最後に
以上が労働条件審査の概略ですが、審査もその目的によって進め方は異なります。例えば、労働条件審査の目的が入札前の適格審査なのか、又は受託企業の法令遵守度の向上なのかによっても、進め方は変わってきます。→ 社労士会では目的に応じてきめ細かに労働条件審査を行っています。
今後、労働条件審査は嫌でも増えていくと思います。今は地方自治体の一部の取組みかもしれませんが、審査対象とする入札予定価格を引下げる自治体もあり、昨今の建設業の社会保険加入の問題を鑑みると、今後民間企業の契約においても少しずつ導入されていくかもしれません。
以上